シティワーケーション@東京 Vol.2 コロナ禍にみるワーク&ライフスタイルと次世代空間

高橋 侑希
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高橋 侑希

アフターコロナの未来を見据え、ワーク&ライフスタイルの変化を止めない
多様性を許容する次世代空間の在り方を探る取材企画

コロナ禍でのテレワーク推進の影響により、会社員でもオフィスを離れ「好きな時に、好きな場所で働く」新しい働き方やライフスタイルを送る人々が増えています。アドレスホッパー、フリーランスに限らず、新たな価値観を持つ人々にフィットする「新しい暮らし」を提案する企業への注目も高まってきています。
緊急事態宣言が長引く中、取材協力を頂いた定額制コリビングプラットホーム「HafH(ハフ)」では、連携する宿泊施設が都市部でも急速に増加しています。ワーケーションin和歌山(地方ワーケーション編)に引き続き、今回は“シティ”でのワーケーションのポテンシャルに着目したいと思います。

前編では、「Global Agents」の「HafH」連携1号店「HOTEL GRAPHY 根津」をご紹介。
後編では、近年開業した「The Millennials 渋谷」と「THE LIVELY 麻布十番」の2施設に注目します。

「The Millennials 渋谷」
コロナ禍で“都心のワークプレイス”に

写真:フロント 画像提供:Global Agents

渋谷・神南エリアに近い場所に、近未来的なデザインの「The Millennials 渋谷」があります。
ミレニアル世代をターゲットに2018年にオープンし、IoTシステムを導入。「スマートポッド」と呼ばれる次世代型カプセルでの新しい宿泊体験の提供で、大変話題となりました。

コロナ前は「ポッド」という面白い宿泊スタイルで注目を呼び、ほぼ満室状態が続き、全施設の中で稼働率が最も高い施設でした。ホテルスタッフも個性豊かでインターナショナルなメンバーが集まり、インバウンドが宿泊客の8割を占めていました。意外にもスーツを着た男性ビジネス客の出張利用も多かったそうですが、緊急事態宣言で状況は一変。緊急事態宣言の影響を少なからず受けることとなりました。
早急にワークプレイス利用への施策を打ち出し、まずは「スマートポッド」5部屋からベッドをなくし「テレワークポッド」として利用できるデイプランを新たに販売しました。

*「テレワークポッド」 職場・自宅+α “オフィスのサードプレイス化”

通常の「スマートポッド」はベッドによるプライベート空間が確保されていますが、「テレワークポッド」にあるのは机と椅子のみ。半個室でありながら、静かな環境で集中して作業ができます。
2月より「スマートポッド」と「テレワークポッド」の2つを占有して使える「Work&Sleepプラン」も登場。


写真:「スマートポッド」(左)、「テレワークポッド」(右) 画像提供:Global Agents

*コワーキングサービス「.andwork」 ラウンジをワークプレイスとして開放

開業時から同社が提供する「.andwork」は、宿泊客でなくともホテルラウンジなどを利用できる会員制コワーキングサービスです。渋谷と京都のみで提供していたこのサービスをコロナ禍で全国7施設に拡大しました。

写真:コワーキングフロア 画像提供:Global Agents

その結果、テレワーク利用するワーカーが増え、稼働率も回復していきました。施設をクローズせずとも、軽やかに新たな場の使い方を提供した、初動の速さはさすが!
2020年9月に「HafH」との連携が始まると、20代~30代のアドレスホッパーが訪れるようになり、稼働を支える重要な客層に。コロナ禍の効果として、本来のターゲット層であるミレニアル世代も増えることとなりました。

*場所貸し大規模イベントから小規模イベント展開へ

コロナ禍でも楽しめる“自然や暮らし”のアイデアを発信
以前はラウンジをメディア発信力の高いイベントスペースとして貸し出しており、立地の良さから企業系の大規模なセミナーや交流会の場としても使われていましたが、コロナ禍で一旦ストップ。
代わりに、インスタライブを活用したワインイベントや門松を作るワークショップなど、等身大の生活を豊かにするようなSNS発信を増やしたとのこと。以前のような大規模イベントでの場所貸しではなく、施設ごとの個性を発揮する小規模イベントやワークショップを主催する機会が増えたことで、細やかなユーザーコミュニケーションを発揮されています。

写真:門松のイベント 画像提供:Global Agents

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【施設概要】
The Millennials 渋谷
所在地:東京都渋谷区神南1-20-13

Webサイト:https://www.themillennials.jp/shibuya

「THE LIVELY 麻布十番」
コロナ禍の新施策 “泊まらないホテル”と”ローカルミート”

写真:フロント 画像提供:Global Agents

歴史ある商店街が有名な街、「麻布十番」。老舗からトレンド系まで様々なお店が連なる通りの一角にあるのが、2019年11月にオープンしたばかりの「THE LIVELY 麻布十番」です。一度は泊まってみたいスタイリッシュなデザインが目を引き、同社の施設の中でも特に都会的な印象です。

*コミュニケーションの中心 自由でオープンなパブリックラウンジ空間

「THE LIVELY」は「都市型ライフスタイルホテル」ブランドとして展開。
ただ泊まるだけでなく、訪れた人同士の自然なコミュニケーションが楽しめるように、フロントのすぐ隣に広いラウンジを設置。コワーキングサービス「.andwork」では、このオープンなラウンジ空間を利用でき、テレワーク利用の人だけでなく、近隣の出勤する会社員が行き帰りのオアシスとして利用されるなど、ホテルラウンジがカフェのように気軽な「サードプレイス化」している印象を受けました。ビリヤードや座席の配置など、自然でオープンなコミュニケーションを育めるよう、同社のこだわりが詰まった施設の心臓部となっています。

写真:ラウンジスペース 画像提供:Global Agents

*実は地元の常連客も多い 最上階のバーラウンジ「THE LIVERY BAR」

最上階の9階には、宿泊者以外も利用できる「THE LIVELY BAR」があります(緊急事態宣言中はクローズ)。
おしゃれなお店の多い麻布十番の中でも、洗練された空間や使い勝手の良さが好評で、コロナ前から近隣居住者も多く利用しており、地元客と宿泊客の自然な交流が生まれていました。

写真:最上階のバー 

*「気になっていたけど泊まったことがない」港区の潜在顧客にアプローチ

他施設と同様、コロナ前はインバウンドが7割を占めていましたが、緊急事態宣言で方針を転換。すぐに6室をベッドのないテレワークルームとして販売しました。
9時~22時までのデイユース、人数は1部屋2人まで利用可能としたことで、仕事の作業部屋や打合せだけでなく、女子会やママ会、夫婦の特別なディナーの利用など、”サードプレイス個室”としても使われるようになりました。コロナ禍の安心・安全な個室空間は、テレワーク以外の利用でも人気となり、期間中ほぼ100%稼働となったそうです。

写真:テレワークプランの個室 

以前はインバウンドや観光客のみで満室状態が続き、気になっていたが入るきっかけがなかった近隣の港区民も多かったとのこと。トライアルしやすいデイユースプランにより、国内、特に近隣や都内新規ユーザーとのタッチポイントをつくり、テレワーク利用を経験したご主人が後日家族連れで宿泊されるなど、新規リピーター獲得にも繋がっているようです。

*麻布十番の名店とタッグを組み、地域に貢献

歴史ある麻布十番商店街との連携はオープン時から思い描いていたこと。コロナ禍のタイミングと、老舗の店舗との思想が合致し、スピーディに相互連携施策が進んだようです。ディナーやルームサービスで麻布十番の名店が利用できるプランを販売すると、ここならではの体験が都民の心を掴み、あっという間に人気のプランとなりました。
今後も地域の飲食店や、ベーカリー、パティスリーなどと連携し、相乗効果が生まれるような地域貢献を続けていくとのことで、個人的にもとても楽しみにしています。
スタイリッシュな都会のホテルでも地元との繋がりを大切にされ、それがここならではの個性となる。
スタッフの皆様が同社の企業理念を実現し、共感を育む温かみある交流やホスピタリティを感じました。

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【施設概要】
The LIVELY麻布十番
所在地:東京都港区麻布十番1-5-23

Webサイト:https://www.the-lively.com/azabu

シティワ―ケーションを試したくなる空間の魅力とは

以上、前編と合わせて、「Global Agents」の3施設をご紹介しました。
それぞれの施設の特筆すべき点として、以下のようにまとめてみます。

「HOTEL GRAPHY 根津」:ホテル/レジデンス機能を柔軟に変化させる、空間の可変性の高さ
「The Millennials 渋谷」:気軽に使えるワークプレイスとして利用ハードルを下げ、暮らしに身近な存在へ
「THE LIVELY 麻布十番」:あらゆる使い方ができる、サードプレイスとしての”泊まらないホテル”を実現

「Global Agents」の施設がつくり出した、空間の新たな価値とは?

宿泊業はコロナ禍で最もダメージを受けた業界の一つで、特にインバウンドに人気の高い施設ほど、コロナ直後の影響は大きなものだったと感じます。今回、取材にご協力頂いた「Global Agents」の皆様は、逆境にありながらも、国内ユーザーや地域に住まう人を新規ユーザーとしていち早く取り込めるように、果敢にチャレンジしていく姿勢が非常に印象的でした。

その根底には、“地域資源との連携×コミュニケーション”という同社ならではの軸で、施設の魅力を更に高める施策を打ち出し、ターゲットや間口を広げていく戦略があるように思います。
また、運営スタッフの皆様の細やかなホスピタリティとコミュニケーション能力で、同じ企業の施設であるにも関わらず、施設ごとに独自性のある豊かな体験を創出し、「ホテル=宿泊」という固定概念を超越し、オフィスや家とは異なる、新たな“居場所”づくりを実践しているように感じました。

“テレワーク=自宅“とは限らない!

感染防止のため各社でテレワークが推奨される中、未だに「自宅での勤務」が原則という企業も多くあります。
自宅での勤務を強いられるも、テレワーク環境が万全でなかったり、家族に気を遣ったり、飲みにも行けないとなると一日中家に引き籠ることもあったり・・・
必死で自宅に閉じこもりながら、付加価値を生み出すことに、もはや限界を感じる人もおられるのではないでしょうか。

家でなくとも仕事はできます!
家から出ると、そこで出会う新たなコミュニティとの繋がりや、新たな発想も広がる可能性が大いにあります。ドラスティックな価値観の転換が求められるいま、自由な働き方を推進することが企業においても必要なのかもしれません。

すぐに企業の価値観を変えることは、個々人ではなかなか難しいものの、まずは、あれこれ考えず、新しい働き方やライフスタイルの可能性を一度、体験してみてはいかがでしょうか?

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高橋 侑希

高橋 侑希

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