社員が幸せになるワークプレイス、イノベーションはそこから生まれる

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ノムログ編集部
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働き方の多様化・健康意識の高まりにともない、企業も「健康経営®」などを通じて社員のコミュニケーション活性化や、創造性の向上、より良い働き方とその先のウェルビーイングを目指す動きが加速しています。

乃村工藝社にて開催した本セミナーでは、2021年のコロナ禍にオフィスリニューアルを実施した企業経営者様と、担当した乃村工藝社の空間デザイナーが登壇し、ワークプレイスをはじめ、リニューアルの検討プロセス、社員自身がオフィス運営に携わるメリットや、企業の持続的な成長にどうつながるのかを紐解きました。

乃村工藝社本社4階にあるコミュニケーション・スペース「RESET SPACE」からライブ配信し、打合せをする社員の気配やコーヒーの香りを感じながらのトークセッションの模様をお伝えします。また本稿ではオフィス投資についても話題が及んだアフタートークを公開します。

ワークプレイスとは?
ワークプレイスは、「仕事をする場所」という基本的な意味を持つ「work」と「place」の合成語です。この概念はオフィスに限らず、仕事を行うあらゆる場所を包括します。ただの労働場所を超えて、人々が集い、知的活動を展開する空間として捉えられています。ワークプレイスの設計においては、働く人々(People)、働き方(Process)、そして物理的な空間(Place)の3つの要素を総合的に考慮し、組織の目標達成に向けた最適な方法を模索します。ワークプレイスという観点は、オフィスの機能だけでなく、働き方や生活スタイルにも深い影響を及ぼしています。

ワークプレイス対談の3人

Moderator
藤本あゆみさん 一般社団法人 at Will Work代表/写真左
「働き方を選択できる社会づくり」を目指す団体の代表理事として働き方の潮流を最前線で追う。

Speaker
渡邊伸一さん グロースエクスパートナーズ株式会社 代表取締役社長 グループCEO/写真中央
社員のエンゲージメントとウェルビーイングを高めるため2021年10月に自社オフィスを全面リニューアル。

山野辺学 株式会社乃村工藝社 空間デザイナー/写真右
乃村工藝社コミュニケーション・スペース「RESET SPACE」をはじめ、数多くのワークプレイスを手掛る

※登壇者の所属団体名・役職は2021年12月当時

Title  社員が幸せになるワークプレイス、イノベーションはそこから生まれる
ニューノーマル時代のオフィス事例
Date 2021年12月21日(火)
Space 株式会社乃村工藝社コミュニケーション・スペース「RESET SPACE」

オフィスは、働く場ではなくなった

ニューノーマル時代のワークプレイス:乃村工藝社の調査結果、事例から考える

セッションを始める前に乃村工藝社が実施した「2021年 働き方と働く場に関する意識調査」の結果を紹介しました。この調査結果から、ニューノーマル時代のワークプレイスには企業文化や理念の見える化、社員の多様性を活かしながら一体感を醸成すること、社員の充足感をどのように高めていくか等がポイントであることがわかりました。

次に乃村工藝社空間デザイナーの山野辺が、コロナ前とコロナになってからのワークプレイス事例、そして2021年にリニューアルした乃村工藝社の新オフィスを紹介しました。

ワークプレイス対談の会話の様子

山野辺
コロナ前は、オフィスは働く場所、家は休む場所、街は遊ぶ場所とそれぞれ機能が分かれていましたが、コロナになってその機能が家に集中してきました。そして、規制緩和されてからも、家の中でも意外と仕事ができることにみんなが気づき、働く場所はもっとフレキシブルに考えてもいいと思い始めています。

ワークプレイスのbefore、now

今までオフィスは仕事をする場所だったが、これからは創造活動をする場になると思います。オフィスでしかできないことを強化していき、空間に余白を生み出し、豊かさを取り戻すことが重要となります。なので、今までの「仕事をするためのワークプレイス」から、「インスピレーションを生み出すクリエイティブスペース」へと進化させようとチーム内で話しています。また、リアルで会うことの価値はさらに高まっていて、オフィスは偶発的な出会いを含めたコミュニケーションの場であり、ブランド発信の場、あるいは企業フィロソフィーを示す場として残るのではないでしょうか。

藤本さん
働くだけだった場所がコミュニケーションの場所になっていく。その使い方を社員の皆さんが考えていくというのが、これからのオフィスの在り方かもれませんね。

ワークプレイス対談の会話の様子

 

アーカイブ動画では、「ワークプレイスデザインの潮流」として3つの事例を取り上げ、詳しくお伝えしています。ご視聴希望の方は、こちらよりお申込みください。

「ワークプレイスデザインの潮流」として3つの事例

左)イノベーションを生み出すために、コミュニケーションからはじめる         BOSCH 渋谷本社オフィスのコミュニケーションフロア「The NEST
中央)飲食フロアを商業施設内コミュニティラウンジにバリューアップ         サンシャインシティアルパのコミュニティラウンジ「Sunshine City SOLARIUM
右) ニューノーマル時代のオフィスを自社運営で実験 乃村工藝社新オフィス

 

ニューノーマル時代、社員と会社にとって必要なオフィスとは?

グロースエクスパートナーズ株式会社の渡邊伸一さんが、コロナ禍で感じた働き方の課題とニューノーマル時代に合わせたオフィスに改装した経緯について語りました。

渡邊さん
グロースエクスパートナーズ株式会社は、「銀の認定(※1)」「えるぼし(※2)」の最高位3つ星認定、「健康経営優良法人2022」に認定された健康優良企業です。社名に企業理念が込められていて、顧客と社員の成長をシンクロさせることで持続可能なビジネスの実現を目指しています。その根底には社員が自ら成長し、その集大成が企業の成長に繋がると考え、社員が安心して働くことができ、自分の成長に向き合える環境をつくることを事業の運営方針の基本としています。

※1 銀の認定:健康企業宣言東京推進協議会が運営する
※2 えるぼし:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定制度で、一定の基準を満たし、女性活躍推進に関する状況などが優良な企業に発行されます。 認定は、厚生労働大臣より送られます。

ワークプレイス対談の会話の様子

当社ではコロナのため2020年3月末から全面出社禁止にし、完全にリモートワークに移行しました。そうした中で想定外だったのが、リモートワークに移行しても会社の業績が下がらなかったことです。オフィスがなくても仕事が成り立つことに気づき、それまでビルの2フロアを借りていたのを1フロアに縮小して、さらにその1フロアも解約しようとしていました。そんなときにビル管理会社から展望のいい48階に移転しませんか?というご提案を受け、乃村工藝社の山野辺さんと出会うきっかけをつくっていただきました。
山野辺さんと新しいオフィスの在り方を話し合ううちに、とにかく社員が来たくなるオフィス、仕事をしなくてもいいから仲間と集いたくなるようなオフィスを作ろう!と思いました。

社員の自発性を高めるワークプレイス
社員がワクワクして自発的に集まるアイディアを

そのような経緯があってグロースエクスパートナーズ社の本社オフィスは、ニューノーマル時代を見据えたオフィスへと生まれ変わりました。その空間デザインを担当した山野辺がデザインのポイントを紹介しました。

山野辺
みんなが来たくなるオフィスにするため、ウェルネス、エンゲージメント、成長するということが大切だと考えました。48階という展望の素晴らしさを生かし、人が集まり交流する機能を中心に集める“SKY Agora(※3)”というコンセプトを打ち立てました。新しいオフィスでは、執務エリアのデスクを特殊な形状にしたり、会議室をカーテンで仕切ったり、柱にフランス人アートディレクターLeslie Davidのアートワークを採用したりと今までの“仕事をする場”としてのオフィスの概念を覆すワクワクする空間になっています。

※3 AGORA(アゴラ):集会のための場所、広場

デザインコンセプト

デザインコンセプト2

渡邊さん
わざわざ人が集まる場なので、それぞれが個の空間に入ってしまったら在宅勤務と変わらない。あえて隣の人と接するようにしました。当社では、現在は社員に週1回のローテーション出社を推奨していますが(※4)、新しいオフィスになって3割ぐらい出社率が上がったと感じています。みんな自発的にオフィスに来てくれて、いままで接点のない社員同士が雑談をしたり、新しいオフィスの写真をSNSに投稿したり、その投稿に“いいね”がたくさん付いたり、とくに若手の社員が喜んでくれています。

※4 2021年12月当時

社員が撮影した夕暮れの写真社員が撮影した夕暮れの写真

 

アーカイブ動画では、グロースエクスパートナーズ社のデザインストーリーを詳しく取り上げています。ご視聴希望の方は、こちらよりお申込みください。

ワークプレイスは社員が育てる。
作って終わりではない、進化していく。

ワークプレイス対談の会話の様子

山野辺
例えばここのコミュニケーション・スペース「RESET SPACE」では人流解析を行い、レイアウトの改善やお客様へのご提案に役立てています。また社員の自発的なイベントが100回近く(※5)開催されています。社員アンケートも実施し、社員が自ら運営し育てていくことで、空間への愛着が生まれてきます。

2018年当時の写真

藤本さん
渡邊さんは、新しいオフィスをどんな風に進化させていきたいか、何かイメージされていますか?

渡邊さん
もうオフィスはいらないかも、という意見もある中であえて社員が来たくなる場を作りました。その場をどう活用していくかは、社員が自発的に考え、話し合っていくことでアイディアが生まれ、オフィスが有機的に変わっていくと感じています。

※5コロナ前、現在はオンライン併用などで実施

これからのワークプレイスのキーワードは
コミュニケーションハブ、企業文化の象徴、人が成長する場

藤本さん
「これからのワークプレイスに求められること」は何だと思いますか?

山野辺
会社に行きたくなるような、楽しいオフィスでないと社員のエンゲージメントも上がらないし、イノベーションも起こりません。設計する立場から言うと、それをその企業毎の企業文化等にフィットした形でご提案していかないといけないと思います。

渡邊さん
経営者として、社員が働く環境や社員の成長に執着しています。社員という人的リソースが当社の成長の一番の原動力なので、働く環境に対する投資も人材育成のための投資だと思っています。また、当社がコロナ禍で業績に影響がなかったのは、長年培ってきた信頼やコミュニケーションの積み重ねによる企業文化や組織風土があったからです。新しいオフィスは、これを継承させて社員一人ひとりが成長できる場所であるべきだと思います。

ワークプレイス対談の会話の様子

リモートワークが日常化する中で、今までは気づかなかった偶然の出会いやコミュニケーションが失われ、それによって企業文化や組織風土が希薄になることが考えられます。これからの時代のワークプレイスは、コミュニケーションの場として企業のアイデンティティやカルチャーを継承させ、社員一人ひとりが成長できる場所であることが求められます。また、そうすることで企業の持続的な成長も期待できるのだと思います。

 

アーカイブ動画では、経営者とデザイナーが答える参加者からのQ&A、コミュニケーション・スペース「RESET SPACE」の効果なども取り上げています。

AFTER TALK
オフィスリニューアルは、社員・会社・社会に向けた“成長への投資”と考える

ワークプレイスで対談した3人

ライブ配信後のアフタートークでは、経営者ならではの視点からオフィス投資についても語られました。配信ではお見せできなかった会話の一部をノムログ限定公開でお届けします。

渡邊さん
企業が50年後、100年後まで持続するには、企業のアイデンティティやカルチャーを体感できるナレッジ継承の場が必要だと思います。そこでは、物理的な拠り所でのケミストリー(※6)が非常に重要だと考えています。そういった理由から、短期的な投資で考えると、オフィスは縮小・不要となりますが、長期的な目線で捉えるとオフィスに投資をすべきだと考えました。

会社はあくまで器であって、人が財産。 “自らの価値を創造する場”、“社員が成長する場”として今回のオフィスはとても良いと言えます。また、社員だけでなくお客様や協力会社様のすべてが一緒に成長していくことが大切です。それは長期的に見れば社会を巡り巡って会社の持続的な成長へとつながっていく。だから今回のオフィスのリニューアルは、社員・会社・社会のすべてに向けての“成長への投資”と言えるのです。

※6 ケミストリー:偶発的な出会い、お互いを高め合う関係や効果

グロースエクスパートナーズ社採用ページより
グロースエクスパートナーズ社採用ページより

山野辺
今回は、標準仕様に戻さない状態から現場に入ることができたので、コスト面でも効率がよかったと思います。働き方にあわせたデザインができるのでニューノーマル時代のリニューアル向きと言えますね。これからは、ますますワークプレイスも多様化していくので、設計の自由度が高い古いビルにも価値が出てくると思います。

グロースエクスパートナーズ様のリニューアルでは、検討過程からコラボレーションできたことが良い結果につながりました。経営者が目指す働き方と社員の声、その2つのニーズをチューニングすることが乃村工藝社の役割だと思っています。

コロナ前のワークプレイスのリニューアルでは一人当たりのスペースや最大面積の考え方が議論の中心でしたが、渡邉社長とはワークプレイスがもたらす社員の行動変容を話し合ってきました。

渡邉さん
実際に以前のオフィスと比べウェルビーイングになりました。社員の行動変容は、デスクで仕事をしているときの佇まいにも表れています。また、在宅勤務が多く健康診断の結果が悪い社員もいましたが、リニューアル後には出社する頻度が増え健康を取り戻した社員もいます。気持ちも前向きになり、大事にされていると感じるという声もあり、いい効果が出ています。

ワークプレイス変革でウェルビーイングを実現

オフィスリニューアルのヒントが詰まったアーカイブ動画をお申込みいただくと、セミナー動画全編の視聴・スライド資料がダウンロードいただけます。ご視聴希望の方は、こちらよりお申込みください。

 

登壇者のプロフィール(経歴は2021年12月当時)

藤本 あゆみさん
一般社団法人at Will Work 代表理事
Plug and Play Japan株式会社 執行役員CMO
一般社団法人マーケターキャリア協会 理事

大学卒業後、求人広告媒体の営業職、マネージャー職を経てGoogleに転職。営業マネージャーを経て女性活躍プロジェクト「Women Will Project」のパートナー担当に就任。その後、Googleを退社し2016年5月、働き方の潮流を最前線で追う一般社団法人at Will Work設立。Plug and Play株式会社では、執行役員CMOを務め、マーケティングとPRを統括。

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渡邉 伸一さん
グロースエクスパートナーズ株式会社
代表取締役社長 グループCEO

医療、金融、製造、百貨店からスポーツ連盟など多彩な企業に対し、クリエイティブ・プロデュース事業、コンサルティング事業など多岐にわたる事業を展開。現在は6社に及ぶ持株会社によるグループ会社CEOも務める。2021年現在10期連続増収を達成中。社員が安心して意欲的・創造的に働いていくために多様な働き方・成長・健康をサポートする取り組みを導入し、2021年10月には「社員が幸せになれる、パフォーマンス向上プレイス」を目指して新宿野村ビル48階に本社移転し、ワークプレイスを全面リニューアルした。

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山野辺 学
株式会社乃村工藝社 空間デザイナー

「居心地の良い空間とは何か」を常に心がけ、商業系の物販店舗をはじめ近年はワークプレイスのプロジェクトを多く手掛け、コミュニケーションが活性化する仕掛けや運営まで見据えたクリエイティブ提案を行っている。株式会社乃村工藝社「RESET SPACE(RE/SP)」(2018 年)で「BAMBOO AWARD 2019」ゴールド受賞、ボッシュ 渋谷本社オフィス 10F 「The NEST」(2019 年)で第 32 回日経ニューオフィス賞の「ニューオフィス推進賞」を受賞。直近では、コミュニティラウンジ「Sunshine City SOLARIUM(サンシャインシティ ソラリウム)」(2021年)を担当

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“空間と体験”を追求するチーム
プロの目線で“空間と体験”の可能性を切り取ります

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