MUTEK 2019 レポート【前編】

高橋 侑希
高橋 侑希
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高橋 侑希

2019年12月に渋谷で開催された
デジタルアートと電子音楽のフェスティバル「MUTEK.JP」をレポート。
前編、後編と2回に分けてお伝えします。

MUTEKとは?

カナダ・モントリオール発の、デジタル・クリエイティビティ、電子音楽、オーディオ・ビジュアルアートの総合フェスティバル。
最先端のアート、テクノロジー、ライブエンタテイメント、シンポジウムが融合し、アーティスト同士の交流の場や、クリエイティブナレッジのショーケースとして世界的な知名度を誇ります。

本国のMUTEKでは、世界各地から毎年約2万人が来場。
メキシコシティ、バルセロナ、ブエノスアイレス、ドバイ、サンフランシスコ、東京と、世界の各主要都市で開催される巨大フェスティバルへと成長しています。

「MUTEK」の由来は「MUSIC」と「TECHNOLOGY」ですが、そのなかにある「MUTATION(融合)」の概念を重要視しています。MUTEKはテクノロジーによって進化した音楽の突然変異を最前線で追い続けながら、音楽とテクノロジーと対話する世界を探し続けるという考え方をもっています。(MUTEK.JP公式サイトより)

日本では2016年から開催され、今回で4回目。
今年は初の渋谷エリアでの開催となり、会期も5日間へと延長。
再開発が相次ぐ渋谷の街のエネルギーを受け、アートや電子音楽の力を感じるパワフルな5日間となりました。
※レポート内のアーティスト名は敬称略としています。

会場を彩るインスタレーション

Day1~3の夜のプログラムはSHIBUYA STREAM HALLで開催。
会場にはパフォーマンスの合間に楽しめる、様々なインスタレーションも展示されました。

アーティスト集団NOAによる鮮やかなアート
「dyebirth_observation」

ライフアルゴリズム(生命の誕生、進化、淘汰などのプロセスを再現する簡易的モデル)を用いてインクを自律投下させ、有機的な色の混ざり合いを生み出します。
模様は壁面にリアルタイムで映し出され、会場で最もフォトジェニックなスポットとなりました。

クリエイティブユニットtoe on netによる光と音のブース
「Rembrandt」

黒いブースの中にスモークが焚かれ、様々に変化する光線と電子音がシンクロします。
限られた視界の中で聴覚を研ぎ澄まし、光に身を委ねる体験が新しく感じました。

ゲーム音楽とアニメーションでグルーヴする

Day2の夜のプログラム「Nocturne2」はゲームやアニメーションに関するパフォーマンスが印象に残りました。

ビデオゲームの名盤「Streets of Rage(ベア・ナックル)」の作曲者
古代祐三と川島基弘によるライブユニット

「ビデオゲーム・ミュージックの限界を試したい」という二人の思いの元、20年以上前に生み出されたサウンドがダンスミュージックへと昇華。ヘヴィなゲームサウンドが奏でられます。
二人の背景にはベア・ナックルのプレイシーンが一杯に映し出され、どこか懐かしく、けれども思わず踊りたくなるような、メロディアスな空間が生まれました。

ロンドンのダブステップレーベル ”Hyperdub” 主宰、Kode9と
アニメーション監督の森本晃司によるオーディオビジュアルセット

森本晃司氏は『アニマトリックス』などを手掛けるアニメーター界の大御所。
大画面で見る鮮やかかつ滑らかな映像と、Kode9ならではのダブステップ、UKハウス、グライム、サイケデリックなどが融合したサウンドが見事に調和。
アジアンテイストなサウンドでは東京のネオンをモチーフにしたアニメーションが流れるなど、音の解釈に更なる広がりや発見が生まれます。
パフォーマンスが終了すると、壮大な芸術作品を鑑賞した後のような、深い感嘆の声が会場から次々と漏れるのが分かりました。

ホールの限界が試される、最先端サウンドに出会う

フィールドレコーディングで唯一無地の音楽を奏でる
Yosi Horikawa

Yosi Horikawa氏は普段注力して聞くことのない環境音に注目し、森林やビーチ、都市や自宅などから音を採取、一つの音楽へと構築する独自のスタイルでサウンドを生み出します。東急プラザ銀座内「METoA Ginza」のエレベーターのサウンド・デザインなど、空間音響も幅広く手掛けるクリエイターです。
ライブでは暴風の中にいるかのような轟音、楽器と電子音が混ざり合う特徴的なKick音など、ここでしか聞けない音が次々と繰り出されます。
最後はリズミカルなダンスサウンドで締めくくられ、大歓声を浴びながらの終了となりました。

トラックメイカーSeihoによるDJ LIVE

恒例の生け花パフォーマンスからスタート。最新リリースされた「Triangle」も織り交ぜながら、自ら手掛けたトラックを中心に緩急のついた展開で観客を魅了。
全身が震えるような重低音から軽快なサウンドまで、次々と音を変化させるその手腕は見事。
自らの姿をモチーフにしたビジュアルが背景に映し出される場面もあり、自身も全身で音楽を表現。Seihoの世界観を存分に堪能できる1時間となりました。

世界的プロデューサーKuniyuki × Soichi Terada × Sauce81よるライブセット

Rainbow Disco Clubや アムステルダムのADEなど、世界的フェスティバルでも披露された実力派プロデューサーが揃った貴重なライブセット。
この日の締めくくりにふさわしい、会場の音響スペックをフル活用した重厚なシンセサイザーサウンドで、会場の熱気は最高潮に達しました。

会期後半の舞台はLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)へ。
LIQUIDROOMで開催された会期中唯一のオールナイトプログラムもレポートします。
後編に続く

 

開催概要 ※会期終了しております
MUTEK.JP EDITION4
https://mutek.jp/
会期:2019年12月11日~15日
会場:渋谷エリア9会場(SHIBUYA STREAM HALL、LINE CUBE SHIBUYA、EDGE OF、LIQUIDROOM等)
主催:MUTEK JAPAN

Photo:MUTEK JAPAN

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高橋 侑希

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