ヒデキのゆるゆる渚歩記/ep7 -「コレなに?」クイズ編-

サトウ ヒデキ
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サトウ ヒデキ

久しぶり投稿のワケ

皆さん、こんにちは、湘南・茅ヶ崎在住のヒデキです。

前回の『渚歩記』から、なんと1年9か月も経ってしまいました。
パンデミック禍となって以降のこの2年、このノムログにおいてもウィズ/アフターコロナを題材にした投稿が主流となってきました。そのような記事群のなかで、「世の役に立てるとは思えないワタクシごときのごくプライベートなテーマを発信することに、果たしてどれだけの意味があるのか?」と、コロナ禍においてのこのシリーズの存在意義に自ら疑問を抱いてしまい、しばらく筆を止めていました。

※ノムログの“箸休め記事”と自称する『渚歩記』は、「コロナ禍にあって必要とされていないのでは?」と自問自答。

そんな中、昨年末に開催されたノムログ編集会議にて、『編集委員が選ぶ!おすすめノムログ記事のまとめ』を語り合うなかで、このシリーズを楽しみにしてくれている方々もいるのだということを知り、止めた筆を再び走らせてみる(厳密にはキーボードを打つのだけど)ことにしました。

現在、新型コロナウイルス感染急拡大による第6波のため、外出を控えている方も多いでしょう。
そこで、今回は以前から予告させてもらっていました 漂着物クイズ をお届けすることにしました。
ウェブ上ではありますが、渚歩きをする気分 で漂着物を題材にしたクイズを楽しんでもらえたらと思います。
また、漂着物にまつわるちょっとしたお話も併せてお楽しみください!

では、初級編として、カンタンと思われる問題から順に肩慣らしをしていきましょう!
写真を見て、答えを考えてみてください。

漂着物クイズ、スタート!

問題1.あれっ、コレはなに? 砂や砂利に紛れてこんなものが!

※渚歩きの定番ともいえる漂着物です!

正解は…
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問題1.の正解は、『ビーチグラス(シーグラス)』でした!

主にボトルなどのガラス製品の破片です。 カンタン過ぎましたか?

ビーチグラスとは波や砂にもまれ、時間をかけて角が取れ、表面がすりガラスのような独特の風合いが出たものです。 海をモチーフにしたアートやオブジェ、アクセサリー制作などに利用する人も多くいます。 (ワタシもその一人)

ワタシが棲む湘南から、このビーチグラスを活用した『ビーチマネー』の取り組みが広がっています。
ビーチマネービーチクリーン(浜辺でのゴミ拾い)で見つけたビーチグラスを加盟店で通貨として使用できるユニークなシステムです。
お金儲けのためではなく、宝さがしを楽しみながら地元の浜をキレイにしていくことが目的。
通貨として認められるのは、どこかの辺が3㎝以上で、怪我をしない程度に角が取れて丸まったもの。
珍しい色は価値が高く、最高値は200円。よくある白や茶は30円程度の価値。1回の利用は300円までというルールになっています。 素敵なアイデアですよね! ご興味のある方は、こちらをご参照ください↓

拾ったビーチグラスが地域通貨に?湘南から広がるビーチマネーとは】 https://waval.net/55763/

続いてこんなモノたちを見つけましたよ!

問題2. AとB、コレなんでしょう? Aはザラっとした質感、Bはツルツルしている!

※Aはペットショップで売られていることもあります。

さて、正解は…
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問題2の正解は、『A.コウイカの甲羅(骨)』 『B.ネコザメの卵』です!

2つともわかりましたか? コウイカの甲羅は春から夏にかけてよく見つかります。
ネコザメの卵を見つけたのは、数年間続けている渚歩きのなかでも、たった一度だけです。

コウイカの骨は『カトルボーン』 の名で、インコなど鳥類のカルシウムなどを補う副食として利用されています。 我が家のカメたち(ep3をご参照)も大好きで、与えると仲間同士で奪うように食らいつきます。

一般には、甲羅や骨と称していますが、実は、貝殻なんです。イカやタコなどの頭足類は大昔には貝殻を持っており、その名残というワケです。渦巻きのような化石で見つかるアンモナイトがまさにそれですね。タコは完全にその名残を失くしましたが、同じ頭足類のタコブネやアオイガイ、オオムガイの仲間は今も貝殻を背負っています。

ワタシが見つけた写真のネコザメの卵(殻)はすでにハッチアウトしたあとのもので、中は空でした。
ドリルのような形状は、回転しながら岩の割れ目に入っていき、ひだ部分ががっちり岩や海藻に食い込むようになっているのです。 卵を産んだ後、親が口に咥えて運び、岩の割れ目などに押し入れるというのですが、その姿を想像するだけで、なんだか愛おしく感じてしまいます!
卵を運ぶ姿の写真はコチラで見られます↓

【Flicks】https://flickr.com/photos/tasosviglas/2379408758

今度はこんなモノが…. 和菓子などに付いているプラ楊枝みたいだけど….

3. コレはなに? ここからは中級レベルの問題ですよ!

※なんだか武器にもなりそう!

それでは、正解の発表です!↓
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問題3.の正解は、『エイの毒針』でした!

「ノコギリザメの長く伸びた吻(フン)の部分では?」と思った方はいませんか?
ワタシも最初は、ノコギリザメの赤ちゃん説 を一瞬疑りましたが、形状が全く違うのですぐにその説は消えました。

エイの毒針は長く伸びた尾についています。
アカエイやホシエイの場合、刺されどころにより最悪死に至ることもあります。
ワタシは、死んだエイからこの毒針を取ろうとして、誤って指に刺してしまった(痛っ!)ことがあります。
ノコギリ状の歯がカエシになっていて、すぐには抜けず少々焦りました。幸い、毒はすでに抜けていたようで大事には至りませんでした。 自らの不注意を反省しましたが、身をもって毒針の仕組みを体験できたことは貴重な経験のひとつです。
エイの毒は、『タンパク質毒』のため熱に弱く、やけどをしない程度のお湯に患部を浸すと痛むが和らぐそうです。
ちなみに、前出のネコザメにも背びれ部分に毒針(棘)と呼ばれるモノがあります。特に子どもの頃に捕食者に噛みつかれた際、口内に刺さって吐き出させる仕組みになっています。毒性についてはあまりよくわかっていないようです。 人が足を着ける浅い水域までやってくるエイとは違い、人的な被害がほとんどないからでしょう。

一見、エイのような平たいサメがいます。 (カスザメやサカタザメなど)
エイとサメは同じ板鰓亜網に属する軟骨魚類ですが、違いは鰓(エラ)の位置で見分けます。
エイは腹側に、サメは側面にエラがあることで分類しているんです。

もう少し、変わった漂着物を探してみましょう。

アッ! 得体の知れない物体を発見!

問題4. コレはなんでしょう? これが分かったら、かなりの通!

※なんだか、化石のようですね!

正解は~!
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問題4.の正解は、『ウミスズメ(ハコフグの仲間)』でした!

ウミスズメという名は鳥類にもいますが、魚類であるフグ目ハコフグ科のお魚です。

ハコフグを触ったことがある人(滅多にいないか!)はわかると思いますが、ハコフグの仲間は『骨板』と呼ばれる六角形の硬い鱗(ウロコ)がつながった皮膚が、文字通り “箱型”の硬い鎧を纏うようにして外敵から身を守っています。
この六角形がつながったカタチは、『ハニカム構造』と呼ばれます。 Honey(蜜蜂)comb(櫛)、すなわち「ミツバチの巣」が語源です。カメの甲羅やトンボの眼(複眼)など、自然界でよくみられます。 シンプルな構成で強度を得られるため、工業世界でも多くと取り入られていますよね。 自然の造形は理に適っていることがよくわかります。

ハコフグの仲間は、身を守る術 をもう一つ持っています。 皮膚から神経毒『パフトキシン』を分泌します。
そのため、他の魚と一緒の水槽に入れ飼うのはリスクが高いと言われています。
また、無毒だと言われていた内蔵にイソギンチャク由来の毒『パリトキシン』を持った個体が見つかりました。
長崎の五島列島には、『かっとっぽ』という、ハコフグの丸焼き料理があり、「肝で和えた身が美味しい」と言われていましたが、現在は肝の食用が禁止になりました。
ちなみに、一般的なフグ毒は『テトロドトキシ』で、食満連鎖による海洋細菌の濃縮によってフグの体内に蓄積します。 近年では、エサのコントロールによる『無毒のフグ』の養殖がおこなわれています。

いかがだったでしょうか、皆さんは何問正解できましたか?
この原稿を見てクイズにチャレンジしたノムログ編集委員5名中、最高で2問正解、0~1問の正解といった結果でした。
一般的には、普段見ないモノばかりなので、なかなかの難問だったようですね。

漂着物の中には、「コレはなんだ ?????」と思うようなモノがよく見つかります。
それは、人工物だったり、自然由来の物であったり、よく観察しながら謎解きをするのも渚歩きの楽しみのひとつです。
水族館や博物館などのミュージアムの展示を手がけることもワタシのお仕事のひとつですが、渚歩きは、それらのヒントになるような、いろいろなことを教えてくれます。厳密に言えば、「見たり、さわったり、感じたり、考える機会」を与えてくれます。

次回は、そんな “浜歩きの最中に考えたクイズ”  をお届けしたいと思います。

※渚クイズの第2弾はコチラ

一昨年の緊急事態宣言発令後に設置された「マリンスポーツ禁止」の看板は、現在撤去されています。

(文章&写真 サトウヒデキ)

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『ヒデキのゆるゆる渚歩記』 back number はこちら!

ep8 「違和感を探せ!」クイズ編2 ep7「コレなに?」クイズ編 ep6「コロナ禍の浜辺」
ep5「漂着ゴミ図鑑」 ep4「いきもの図鑑」 ep3「自然感察眼」 ep2「ボトルメッセージ
ep1「海岸ミュージアム」

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サトウ ヒデキ

テクニカルディレクター(いろいろ擬態中)
G坂本並みの守備範囲と打撃力

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