空間づくりの会社でバーチャル空間をつくる

田中 摂
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田中 摂

コロナの終息はまだ遠く、リアルな施設空間においてイベントなどの活動の縮小や延期、運用の制限が続いています。一方、バーチャル展示会、オンラインイベントなどが急激に増え、この一年でバーチャル空間上での新しい接点も増えてきました。
昨年の1回目の緊急事態宣言下から、「デジタルイノベーション×場づくり」をテーマとするラボラトリーであるNOMLABでは、With/アフターコロナ、ニューノーマルを見据えて新しい空間体験を開発しようと、いくつかのプロジェクトをスタートしました。ひとつは、音声配置アプリケーションを開発するベンチャー企業の株式会社GATARIと制作した、「音」による空間体験拡張のプロトタイプです。
そしてもうひとつが、乃村工藝社の空間デザイナーチームとNOMLABとで連携した、バーチャル空間のプロトタイプ開発です。今回はリアルな空間と体験をつくりつづけてきた乃村工藝社のメンバーが追求するバーチャル空間についてご紹介したいと思います。

空間をつくりつづけてきた乃村工藝社ならではのバーチャル空間をつくる

「これ自分たちでできるなぁ。バーチャルブース、NOMLABで作ってみたいです。」

2020年の初夏。NOMLABの若手デザインエンジニアが、そのとき話題になっていたバーチャル展示会を見ながら、そんなことをつぶやきました。コロナ禍で当社でもオンライン展示会のお手伝いなどが増えており、時を同じくして、デザイン部門のあるメンバーたちが「今後バーチャル空間のデザイン業務も増えていくことを見据えて、バーチャルブースのプロトタイプを作ってみたらどうか」、そんな意見が出はじめていました。話しがつながり、デザイン部門のメンバーとNOMLABメンバーで、「空間をつくりつづけてきた乃村工藝社ならではのバーチャル空間をつくる」プロジェクトがスタートしたのです。

所属・肩書は2021年2月24日時点のものです

空間づくりの経験値×リアル空間の思想からの脱却

オンライン、オフラインの様々なブース事例を共有しながら、空間づくりの会社としてどういったバーチャルブースをつくるべきか検討するなかで、議論を俯瞰してみていたクリエイティブの副本部長から、こんなメッセージを受けました。

「180度思考を変えてください。今までの概念に縛られずに、これから可能になる未来をもっともっと楽しんでください。」

今回のプロトタイプの中心メンバーはデザイナーでもあることからも、まずはクリエイティブの視点でバーチャル空間を追求することにシフト。リアル空間の思想から脱却し、これまで空間体験の追求で培ってきた情報整理力に基づいて、体験のプランニングをしていくことになりました。

同時に、プランニングイメージとプロトタイプとして実装できることが一致していくように、Unreal Engine4を使って少しずつ体験をつくり、プランニングイメージとヘッドマウントディスプレイをつけた際の体験の検証を並行しながら進めていきました。
結果、まず第一弾としては、空間設定はシンプルにして、没入できる体験に特化して制作をしはじめました。

NOMLABの実験部屋で検証(基本は在宅勤務にて制作し、検証時はマスク着用/アルコール除菌/換気は徹底しました)

乃村工藝社の歴史を知り、最新事例を見ることができるバーチャルブース

なにを見せるバーチャルブースなのか。今回はせっかくなので乃村工藝社を知るためのブースをつくることになりました。
乃村工藝社の創業は、明治25年にさかのぼります。足袋職人だった乃村泰資が、芝居好きが高じて道具方に転じたことからはじまり、大衆娯楽だった菊人形を大がかりな装置と仕掛けを使って演出したり、博覧会の展示や百貨店の演出を手掛けたりするようになるなど、その歴史は挑戦に満ち溢れていて、その歴史をギャラリーとして一望できると、乃村工藝社がチャレンジしつづけている企業であることが分かるのではないかと考えました。
また一方で、最近は空間を360°カメラで撮影しているケースも出てきており、最新の事例を全天球映像で見せられると、その場にいったかのような臨場感のある見せ方ができるのではないかという体験が加わりました。
こうして「乃村工藝社の歴史を知り、最新事例を見ることができる」、そんな「啓蒙」と「販促」の二面性を持つバーチャルブースづくりが進みました。

プロトタイプ「Infinity Step~永遠に続く向上心~」

こうして開発された「Infinity Step」(乃村工藝社がたゆまぬチャレンジをしていることからネーミング)の概要をご紹介します。

歴史はギャラリー形式で見渡し、最新事例はその場に訪れたような体験を提供

空間設定はシンプルにするという検討のもと、歴史を辿るフェーズでは、ギャラリーを創業から現代までを4階層にわけ、ヘッドマウントディスプレイをつけた瞬間、創業から現代にかけて、エレベーターに乗って上昇しながら、見回せるよう形式になっています。
最上エリアに到達すると、空間にいくつもの全天球映像の浮かんでおり、視線が合うと、その全天球映像の中に入って、実際にその空間に訪れたような体験が可能になる事例紹介としました。

Unreal Engine4を使って制作

制作は、3Dプラットフォーム Unreal Engine4を使用。NOMLABではUnityとUnreal Engine4を使うメンバーがいますが、今回はUnreal Engine4を使用してメンバーたちがいちから制作しました。メンバー一同、検討段階ではシューティングゲームや、空間を自分で大きくしたり小さくしたりする機能などもつけて、体験のバリエーションを数多く準備してくれましたが、体験の検証フェーズで、操作に集中してしまって訴求したいメッセージに対して印象が残らないひとや、その空間を味わうにはまだまだ慣れが必要な初心者もいる様子がわかったことから、今回においては体験もまたシンプルなものになりました。ただ、慣れている人にとっては、輻輳した操作やゲーム的な要素を楽しんでもらうこともあり、第二弾や今後のフェーズではそういったソリューションはおおいに展開できそうです。

最初はゲーム性の高い体験も制作していた

体験いただくことができます

今回のプロトタイプ制作では、その過程でバーチャル空間における体験プランニングやデザインクオリティのあげかたなど、クリエイティブ面でのノウハウが共有できました。
同時にリアルな空間づくりにおいて培った情報整理力というものが、当社のプランニングやデザインにおけるユニーク性であるということも、バーチャル空間づくりを通じて気づかされ、リアルな空間づくりにおいても、まだまだ開拓の余地があることも感じられました(海外に留学してみて、改めて日本のオリジナリティやその良さに気づき、日本に帰ってきて、新たな視点で取り組んでいく、みたいなイメージでしょうか)。
今後もリアルな空間・バーチャルな空間の垣根なく、未来のあらゆる空間体験において、プランニングから実装までできる乃村工藝社を目指しながら、このプロトタイプの改良や、新たなバージョンに取り組みつつ、サービスデザインの開発にも着手してまいります。

プロトタイプについては現在、当社内にてヘッドマウントディスプレイをつけて体験することができます。またコロナ禍でもあることから、スマートフォンやPCでその映像をご覧いただくことが3月より可能になります。ご興味あるかたはぜひこちらまでご連絡ください。
またNOMLABの正式名称、Nomura Open Innovation Labという名の通り、オープンイノベーション形式でさまざまな外部のかたとのクリエーションに取り組んでいますので、未来の空間体験づくりを一緒に取り組んでみたい、何かの形でコラボレーションをしたいという企業様やクリエイターの方、エンジニアの方との出会いもいつでもお待ちしています。

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田中 摂

田中 摂

NOMLAB マネージャー
出る杭を伸ばすマネジメント

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