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空想を形にする。
新業態店舗づくりと
仕事の思考術

ノムログ編集部
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ノムログ編集部

乃村工藝社グループ社員がさまざまな分野で活躍する有識者と出会い、これからの“空間”や“体験”の可能性を探る対談シリーズ[nomlog MEETS→]。

今回のテーマは「新しい業態をつくる仕事」。今年4月、新宿歌舞伎町の新たなランドマークとして誕生した「東急歌舞伎町タワー」内に開業した「namco TOKYO」の企画・ディレクションを担当し、ブランディングと事業開発を得意とするプランナーが、数々の話題のポップアップストアやイベントをプロデュースするプロデューサー兼プランナーと対談。まだ見ぬ体験・価値創造に挑戦し続ける、両者が語る日々の思考術とは?

nomlog MEETS→
吉田 宗平さん(株式会社THE・STANDARD 代表取締役/プロデューサー)

「ポップアップストア」「フラッグシップストア」のコンセプト開発、コンテンツ・フード開発、空間/施工デザイン、PR・プロモーション、各種申請代行、運営まで全領域をワンストップで手掛けるポップアップストア専門プロデュース会社、株式会社THE・STANDARDを2017年に設立。さらに、大手飲食品ブランドや官公庁、映画、レンタルストアのPR、エクスペリエンスイベント、国際スポーツイベントのホスピタリティ空間体験/ケータリングの設計などに数多くのコミュニケーションプロデュースに従事。
https://t-standard.jp/

<対談者>
株式会社乃村工藝社 阿部 鷹仁
クリエイティブ本部 コンテンツ・インテグレーションセンター
NOMLAB 第2ルーム ルームチーフ
(兼)プランニングセンター 企画1部 第1ルーム

乃村工藝社プランナー。新業態店舗、企業ミュージアム、大型イベントをはじめ、多くの企業の旗艦拠点開発を手掛ける。マーケティング視点とクリエイティブ視点を融合させた戦略・企画構築を強みに、空想力と実装力のあるプランニングを得意とする。
モットーは、らしさをほしさに(顧客らしさを生活者のほしさに)。

*コンテンツ企画・撮影:小椋 瑞希(ビジネスプロデュース本部)
*コンテンツ企画・文:横田 智子(ノムログ編集部)

まずはお互いに自己紹介

阿部
今日はいろいろお話できることを楽しみにしてきました。宜しくお願いします。

吉田さん
こちらこそ、宜しくお願いします。私たちはポップアップストアやフラッグシップストアを専門に、空間体験の企画から運営までワンストップで事業を行っています。領域はかなり幅広く、期間も短くて3日だったり、10カ月だったり、2年だったり…と内容によって変わります。そして大きな強みは、出店ブランドの依頼内容の目的や業種に応じて最適な場所を探せることです。例えば普段はECサイトを中心とした事業を行うクライアントが初めてリアルな空間(オフライン)に出店する場合も多くのご依頼いただきまして、その都度、「どんなスペースで目的(KGI/KPI) 達成の為の体験空間を作り、コンテンツで実施するべきか」を日々提案しています。

特に出店先として需要が高い表参道・渋谷エリアを中心に全国各地を手がけています。場所探しや不動産に関するネットワークや知見は自然に出来ていきました。商業施設さん、不動産会社さんが投資する都市開発の情報が入ってきたり、ブランドの日本初上陸のタイミングの情報が入ってきたり…とさまざまな情報をもとにマッチングしていくことが多いです。

大型のアパレル店舗の閉店が相次ぐ状況に対して、コロナ前からEC主体になってきた時代の流れもあり、さらにコロナの影響で増えてきた“空き店舗”や新しい購買行動の変化とあわせて「まだ見ぬチャレンジの糸口を一緒に見つけてカタチにして欲しい」といったご依頼が増えています。時代の流れとともに変わってきた小売や買い物体験の状況に合わせたOMO・O2O的なお仕事が多くなっていますね。仕事内容の業態をなんてカテゴライズしてよいか表現が難しい、自己紹介が難しい仕事をしています…。

阿部さんは、「何プランナー」ですか?

阿部
乃村工藝社のプランナーも何をしているのか分からないと言われることが多くて。「自分は“何プランナー”なのか?」というのは常に意識しています。私はクライアントの“らしさづくり(ブランディング)”と“しくみづくり(事業開発)”という2つの視点を軸に、新店舗開発や拠点開発、プロモーションイベントからエキスポまで、いろいろ取り組んでいます。特に昨今は、新しい業態を開発するお仕事の機会が増えている印象があります。

「何プランナー?」という問いに対しては、個人的には、CXプランナー(≒ユーザーにとっての体験価値づくり)とサービスデザイナー(クライアントにとっての稼ぎ方づくり)をかけ合わせたようなポジションを意識しています。

吉田さん
なるほど。お互いにプランナーということで、今日はプランナー談義を楽しみましょう。

阿部
ありがとうございます。まずは私の自己紹介を兼ねて、弊社で企画・設計・施工のトータルプロデュースをさせていただいた「namco TOKYO」をご案内します。

ふたりで「namco TOKYO」を見学


撮影:秋倉康介氏

阿部
こちらは4月の東急歌舞伎町タワー開業に合わせてオープンしました。東急歌舞伎町タワーのコンセプトは「好きを極める」。オフィスや物販テナントがない、エンタメ中心のサービスで埋め尽くされた、大遊戯場歌舞伎町でこそ成り立つコンセプチュアルな複合商業開発です。そんな館に「namco TOKYO」が入居することもあり、従来のゲームセンターとは一線を画す新業態が求められました。

歌舞伎町のエリア分析やゲームセンターのサービス分析を行いながら、チャンスとして浮かびあがってきたのが、歌舞伎町という街がとらえきれていない「夜遊びの余白」でした。一軒目の飲みの後、もう一軒飲みに行こうみたいなテンションでもない、でもカラオケに行って歌う気分でもない、クラブにいってウェイする感じでもない…。そんな若い世代がうっすらと感じていた物足りなさの受け皿として、「大人のゲームセンター」という新しいスタイルがフィットするんじゃないか。そんな仮説が立ちました。

その仮説をもとに企画検討をすすめ、最終的に至ったのが「アソベル、ノメル、ツナガレル」というnamco TOKYOのコンセプトです。ゲームセンターは誰かと一緒にいる時間を楽しくさせる力がある、つながりを深める力がある。それをコアコンピタンスとして一層強調し、そこにお酒やライブイベントといった新しい価値を複合させることで、夜遊び感のある一大アミューズメントコンプレックスを実現しました。アソベルを軸に、さらにノメて、もっと仲良くツナガレル、そんな価値を歌舞伎町のど真ん中で提供しています。

 

空間やコンテンツづくりにおいては、ゲームセンター業界ならではのお作法を先方から学ばせていただいた上で、文字通り企画の100本ノックを続けました。その中で、面白さ・namcoらしさ・現実性などを熟考した末に、限られたアイディアが実現までこぎ着けたかたちです。

そのひとつが、このエントランスの「ガシャポンサークル」です。一般的な店舗であれば、エントランス空間は店舗の顔として“装飾”と割り切ったショーウィンドウになりますが、少しでも床があるならゲーム筐体を置くのがゲームセンターの常。歌舞伎町の一等地ならなおさら、ここでは1㎡も床を無駄にできません。


撮影:秋倉康介氏

そんな課題をブレイクスルーしたのが「ガシャポン」をショーウィンドウに用いるというアイディアでした。ガシャポンをこれでもかと積み上げて、インパクト抜群のエントランスゲートをつくるというクリエイティブジャンプです。

ガシャポンを積めば積むほど空間としてインパクトが出るのはもちろん、集積させるほど売り上げが逓増していくことはガシャポン専門店でも実証されています。積み上げた際の意匠性と安全面は弊社デザイナーと制作ディレクターにてしっかりと検証していき、結果250台ものガシャポンが積層した、namco TOKYOの象徴となるエントランスゲートが実現しました。

この他にもいろいろなコンテンツが目白押しですので、ぜひ体験してみてください。

吉田さん
ご案内ありがとうございました。まさに弊社THE・STANDARDでもよくご依頼いただくような新業態の「オンリーワン店舗」ですよね。この歌舞伎町という場所に合っている。観光客目線もあり、新宿的なワイガヤ感もあって…ありそうでなかった新宿の顔となる「令和のアソビバ」だと感じます。館全体がそうかもしれませんが、「どこにでもありそうでなかったものが上手く溶け込んでひとつになった」が、表現されていると思いました。ここに到着してから、館のエスカレーターを上りながら「また、外国人の友人を連れて行きたくなる東京の新名所ができたな」と感じていましたよ。

あとは「namco TOKYO」内のネオンサインが気になりました。ひとつひとつの言葉(コピー)にどういう意図や意味があるのかな、と勝手に妄想しながら見ていました。


撮影:秋倉康介氏

阿部
サインの言葉はクライアントとともに、若い子たちの感度をくすぐるゆるい言葉をひたすら挙げていって、「共感を生むポイントがどこにあるのか」を探っていきました。ネオンのデザインは、昨今ウケているということも一理ありますが、それ以前に歌舞伎町という街の文脈をゲームセンターまで延長させたいという意図がありました。

空間デザインのコンセプトに「ネオ・トーキョー」をかかげ、歌舞伎町のネオン再現に留まらず、現代版としてシティポップに再解釈するところまで追求した結果、ゆるい言葉の数々が浮遊するネオンストリートが完成しました。

吉田さん
エントランスのガシャポンも本当に贅沢ですよね。

阿部
空間にいくつ筐体を置けるか、その配列ひとつでも売り上げが大きく上下する世界なので、ガシャポンもクレーンゲームもレイアウト検証は先方と密なやりとりを重ねました。
またオープン後、“ノメル・ゲームセンター”というスタイルが狙い通り良い反響を得ていることもプランナー冥利に尽きるところです。

吉田さん
いいですね。ちょうど「そのスペースで何をやったらおもしくなるかな~」と考えていました。この場所だったら一番ヒットするコンテンツがつくれそうです。ポップアップとして入れるということも聞いたので、ぜひ弊社もマッチしそうなブランドやコンテンツを提案してみたいです。

阿部
ぜひぜひ吉田さんの企画が楽しみです!

新業態プロジェクトで、プランナーに求められるチカラ

吉田さん
15年ほど前から、大手の企業さんが、若者のチームに新しいプロダクト/サービスを企画してもらい、新しい業態を開発・実行することを体験することで教育&新しい価値を発掘するプロジェクトが増えていまして、過去に20~30プロジェクトほど関わってきました。阿部さんはバンダイナムコさんと同じようなお仕事をされていると伺いましたが、どんな肩書で入られていたのですか?プランナーではないはずですよね。

阿部
役割のひとつは「プランナー」で、先方社内だけだと企画が偏ってしまうので、新しい血を入れたいとのご期待がありました。もうひとつは、その場をドライブさせる「ファシリテーター」です。先方の若手社員を中心に、未来洞察型のバックキャスティング発想で新規事業をカタチにしていく、そのコーチングとワークショップを半年間のプログラムとして行わせていただきました。

隔週で各回3時間の開催。冒頭の1時間は業態開発に有効なフレームワークのインプットを行い、その後の2時間でグループワークをして、最後に各案の発表・振り返りとともに課題を提示し次回提出してもらう…、そんな密な会を半年間ひたすら回していきました。先方がエンターテインメント市場に強みのある企業だからこそ、新市場開発や新商品開発まで視野を広げながら、最終的には3つの新規事業として事業計画書に定着させていきました。

吉田さん
やっぱり、「ファシリテーター」のポジションでしたか! 私も2000年頃からずっとプランナーとしての役割をメインでご依頼いただいていたのですが、実は10年ほど前から「ファシリテーター」の依頼をいただくことが増えていまして。たくさん企画を出して実現する仕事は少しずつ若い人たちに移行していって、私たちには盛り立てて回すことを期待されているのでしょうね。そういう仕事は今後も増えるし、これからプランナーに求められる資質になるのでは、と思っていましたので。

特に大手のメーカーさんはZ世代向けの商品開発、プロモーション、店舗づくり、クラウドファンディング等の新業態開発プロジェクトを立ち上げていらして、私は壁打ちのようなポジションで、「これで本当に実現できると思いますか?」「これで本当に継続的に売れると思いますか?」といった問いかけを続けています。

最終的に、弊社THE・STANDARDではポップアップストアやフラッグシップストアなどの店舗づくりをご依頼いただくことが多いので、マーケティングの与件整理をして、ターゲットを決めて、予算内で会場決め・空間づくりまでイメージしてもらい、さまざまな事例を紹介しながら考えていく感じですね。

空想で企画したものを実装する力/共感よりも実感

阿部
新業態をつくる仕事という視点では、卓上で“空想”したことから、きちんと地上で“実装”させることが重要ですよね。歌舞伎町一丁目一番地で勝ち残っていける業態にする、つまりは歌舞伎町で求められる価値づくりをしていくために、先方といかにターゲットニーズを掴めるか、あるべき業態像へとフォーカスを合わせられるか、そんな向かうべき先へと気持ちよく後押ししていくことも意識していました。

吉田さん
そういう後押しが、ファシリテーターの重要な役割でもありますよね。

阿部
クライアントあってのプロジェクトですので合意形成がとても重要です。そのためには客観的な分析・企画アプローチももちろん欠かせないのですが、その先で主観的な実感を得ること、肌感覚で新業態を「いいね」と思えること、それが何より大切です。“共感”っていうよりも、もはや“実感”ですね。私自身もクライアント自身も、実感としてこんな業態がほしいと強く思えること、個人的なバイアスを超えて“人の本能”としてほしいと思えるものになっていること、そんな境地にまで伴走・伴着できた業態は強いです。そこに至る手段として、クライアントとともに様々な事例調査とへと足を運び、そこで良い・悪いと思った“勘所”について徹底的に議論をする、ということも積極的に行いました。

都市に「いい違和感」をつくる/場所のチカラが強みになる

阿部
ところで、乃村工藝社では「この敷地・このエリアで空間づくりをしてください」という場所が決まった案件が多いのですが、吉田さんのお仕事のお話を聞いていると、会場の提案、マッチングといった段階からご提案されていますよね。そこへの強みをお持ちなのだろうと思いました。

吉田さん
そうですね、それはご依頼いただくブランド様に褒められるところです。実は8年前ほどに某食品ブランドさんの出店に関わるプロポーザルで、「会場の立地や外観価値」で負けたことがあったんです。それをきっかけに独自のネットワークと知見を広げて、「会場提案」では絶対に負けないという想いで日々、「会場提案」のスパーリングを脳内でしています。 

阿部
場所と言えば常々思うのは、使われていない都市のスキマのような場所に異物を持っていくことで“いい違和感”をつくること。この“いい違和感”の視点は我々が大切にすべきことだなと感じることが多くあります。ポップアップストアっていい意味で「街を彩る」効果がありますよね。

吉田さん
確かに、それは渋谷や表参道で特に言えますね。例えば、都市開発のお話をきっかけに、「この建物を取り壊した後の2年間空いています、どんな店舗業態がここにマッチしているでしょうか?」と問われるお仕事もよくありまして。ポップアップストアやフラッグシップストアの出店によるエリアへの波及効果もあるんですよね。

一方で、出店の目的にもよりますが、コロナ禍で「あえて行列をつくらないで」と言われることもあって、周辺に配慮が必要な視点もあります。「自社の商品を売りたいし、人を集めて、街を盛り上げたい」というオーダーであれば、わざと盛況活性の状態をつくって参加も予約制にすることもあれば、「静かにただ商品を見せて体験してもらいたい」「在庫を置かずに予約やEC購買だけとりたい」という、いわゆる「ショールーミングストア」の依頼も増えています。まずはクライアントと向かい合って、先方のご意見を引き出しながら提案していくことが多いですね。

ひとつ実績の事例としてご紹介したいのですが、ヒゲ剃りメーカーのマクセルイズミさん のポップアップスタンドです。老舗ブランドで機能が優れた質のいいシェーバーでありながら価格も良心的なブランドで、ターゲットは20代の若者や大学生。とにかく若者に手に取ってもらって商品の良さを知ってもらえる機会をつくりたい、というオーダーでした。

私たちはこのプロジェクトを請けたPR会社さんから相談を受けて、「ヒゲ剃り(shave)とかき氷(shaved ice)をかけたポップアップスタンド、つくれますかね?どう思います?」と聞かれて「あ、これうまくいきます」と即答したんですね。

なぜかというとこのポップアップスタンドに合う「場所」を知っていたからです。この場所(渋谷センター街の奥の方)の特性上、飲食店が多く、何か食べたいなって思いながら歩いている人が多いエリアなんです。そこに「かき氷、無料です」は、キラーワードになると思いました。皆さん、人生でかき氷を無料で食べることってないですよね!?笑

企画:株式会社スティーブアスタリスク 是近宏明氏(厳密には前職時代の実績)

男性だけではなくカップルでの来場も意識して、女性も楽しめることを考えました。ヒゲ型のゼリーでデコレーションした「かき氷」やらくがきできるウォールを企画しまして、結果はやはり大盛況でした。無料でかき氷を食べているので、ヒゲ剃り体験を勧められると断れない、という心理も突いた形ですね。

ヒゲ型ゼリーをトッピングしたオリジナルかき氷

意味がなければ面白くない、面白くなければ意味がない

阿部
こちらのご実績、失礼ながらとっても“アホ”で素敵ですよね。クライアントの課題に実直に向き合った上で、その先のソリューションにクリエイティブジャンプがある。ヒゲ剃り(shave)とかき氷(shaved ice)をかけあわせて巧妙に企画実装されている、そんな良い意味でのアホなジャンプ力がとっても素敵だなと感じました。

ちなみに私は持論として「アホでロジカルな企画は強い」というのがありまして、一見すると、なんやこれ!と強い違和感を抱くアホな企画の裏に、客観的な分析や芯のあるロジックが実在していることで、対クライアント的にも対ユーザー的にも、非常に強い企画になると考えています。

実績を事例にあげますと、ゲーム会社さんのイベントで企画した「人間UFOキャッチャー」があります。これはUFOキャッチャーを5m角ほどの特大人間UFOキャッチャーとして実装したものでして、秋葉原のど真ん中で突如巨大なUFOキャッチャーが登場して、話題性の渦の中でみなさんこぞって遊んでいただけたのですが、これは当該クライアントだからこそ成功した企画だと思っています。UFOキャッチャーのパイオニアとして、いつも無謀なものに挑戦してきた企業として、根本にその企業価値があったからこそ「人間UFOキャッチャー」はアホでロジカルな企画になり得ましたし、ユーザーの共感を生む強いコンテンツに成り得たと考えています。

吉田さんは、アホとロジックはどちらが先にあることが多いですか?アホって言い過ぎたので「意外性」って言葉に変えましょうか(笑)

吉田さん
ロジックは自分の中で当たり前に落とすために日々繰り返しているので、逆にアホなことを意識しているかもしれません。

阿部
確かに、ロジックは前提としてありますが、それで終わるとつまらない。それに対して「ロジックを超えるジャンプをいかにできるか?」「アホをいかにトッピングできるか?」という視点が大切だな、といつも思っています。背景に意味やロジックがなかったら面白くはないんですが、そもそも面白くなかったらやる意味はない(ユーザーへ価値が届かない)ですし、私も常に両者を意識していますね。

新業態をつくる仕事、その秘訣とは?

阿部
ここまでお話してきて、お互いに新しい業態をつくる仕事、に対して大切にしている秘訣のようなものって何でしょうね?

吉田さん
まずは「即答力」だと思います。初対面の人にいかに即答できるか、と意識していますね。確信がないと即答できないので。クライアントがある意味、無茶なことをおっしゃることが多いんですよね。「これできますか?」「これでお客さんは集まりますか?」と初対面で聞かれることが多くて、「できるかできないか」をその場で即返事をしています。その感覚が、結果的にほぼ合っている、ということが得意かもしれません。

あとは「正直であること」ですかね。うまくいかないことには正直に言う。ダメな時は「やめた方がいい」「うまくいかない」と言います。だから失礼なことをたくさん言っています。でも後でそれを褒められて信頼につながることが多いと感じます。私たちは最終的に現場の運営や実行まで担当させていただくので、自分たちにとってはクライアントの目的を叶えられたかどうか、体験・購買するお客様の反応・結果がすべて。言い訳もできませんので、始める前に「良い・悪い」をはっきり言うようにしています。

阿部
なるほど、直接運営までされているからこその視点ですね。私が大事にしていることは「超主観と超客観」です。この両者を往復して企画を実装させています。超主観は、前述の“実感”にもつながるこれは絶対ほしいと本能的に思える企画まで到達できているかという視点。超客観は、それを斜に構えてバイアスを極力排除して冷静な目で分析するという視点です。そのツンデレみたいな関係性にある両者を何往復もした先で、クリエイティブジャンプを見出せたとき、それはクライアントだからこそ成し得る強い業態になると考えています。

吉田さんとの対談を通じて、業態開発の軸足の1つである「場所」について、その可能性を一層感じました。人、文化、歴史、都市構造、賃料…そんな様々な要素を、場所の成分表的に独自ストックしながら、案件案件に応じて「場所」とかけあわせて企画実装していく。魅力的な企画が魅力的な場所と組みあわさったときの化学反応の強さ(良い違和感の強さ)みたいなものを、あらためて実感しました。

業態開発の醍醐味は、その時代・その企業でしかできないことを0→1で空想できること、1→10で実装できること。その舞台にあるリアルな“場”からは、もっともっと未知が生み出していける! そうポジティブに実感させていただいた時間でした。ありがとうございました!

 

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“空間と体験”を追求するチーム
プロの目線で“空間と体験”の可能性を切り取ります

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