話しの肴シリーズ#02 | ウイスキーと空間って似ている?

飯塚 篤郎
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飯塚 篤郎

こんにちは。
ありがたいことに前回の記事を書いてから、
実際にお酒関連の仕事をやらせていただくことができた飯塚です。

味を占めたわけではありませんが、今回もお酒の話をさせていただきます。笑

ウイスキー、美味しさの秘密

私がウイスキーに熱中したのは一昨年の秋のこと。
それから、ボトルによって「なんか違う」味わいに面白がって、いろいろ飲み比べていくうちに、樽の木の種類が味を変えることや、それらを混ぜ合わせることで味わいに広がりが生み出されていることを知り、ウイスキーの奥深さと面白さにのめり込んでいきました。

ウイスキーに関する知識も、ネットや書籍で学んでいきました。その中で、ひとつ腑に落ちた知識があったので紹介します。
それは、ウイスキーのおいしさは、”多種多様な味の原酒を混ぜ合わせることで生み出されている”ということです。

1杯のウイスキーの中に、何十、何百という樽の原酒が混ぜ合わされていたこと、ご存じでしたでしょうか

1+1≠2を、ダイレクトに体験できるウイスキー

「ウイスキー」とひとことで言っても、原料の違いなどで様々な種類があります。スーパーのお酒売り場などでは、スコットランドでつくられるスコッチウイスキーや、我らが日本のジャパニーズウイスキーを多く見かけますが、その中の大半を占めているものは「ブレンデッドウイスキー」と呼ばれるものです。これは、モルト(大麦)とグレーン(トウモロコシなど)という原料の違う原酒を混ぜ合わせてつくられるウイスキーのことで、異なる味わいの原料が組み合わさることで、味わいに深みや面白さを生み出しているのだと感じています。
ブレンドの基本的な考え方としては、モルトウイスキーの強い個性を味の骨格にし、その個性を、味の主張が穏やかなグレーンウイスキーで包み込み、滑らかな飲みやすさを生み出す。というものらしいのですが、実際に自宅で、モルトウイスキーにグレーンウイスキーを垂らしてみると、グレーンが入ったほうが、モルトの味がより引き立つような気がしたりするので面白いのです。
1+1=2とは限らない。というのを、ウイスキーからはしっかりと感じる事ができます。

ブレンデッドではないウイスキーからも、多様性の面白さを感じることができます。
1つの蒸溜所でつくられたモルト原酒のみで構成され、その蒸溜所の「土地の味」を楽しむことができるとされている「シングルモルト」というウイスキーも、実は多様な原酒を混和してつくられるものです。
例えば、「シングルモルト乃村」というボトルがあったとすれば、ただ乃村工藝社でつくられた原酒をボトルに詰めているのではなく、乃村工藝社で生まれたヤンチャな原酒やおとなしい原酒、ほろ苦い原酒など数多くの原酒を、絶妙な比率で合わせることで「乃村工藝社らしい」味を生み出しているということ。
多様な個性が合わさっているからこそ、ウイスキーの味わいは複雑で面白いのだなと思います。

自宅で愛用しているテイスティングキット。比べてみると、ボトルによって、色も香りも味もまるで違います

街も「個性のブレンド」で構成されている

そんな風に、多様性が生み出すウイスキーの面白さを学んでいると、街中の商業空間もウイスキーと同じなのではないか。と思うことがあります。
たとえば、昔ながらの商店街は「シングルモルト」。その土地の色を商店街全体で醸し出しながら、個々の店舗は個性的で、その多様性が街歩きの面白さを生み出しているのかな、とか。
それで言うとショッピングモールは「ブレンデッドウイスキー」のように、あらゆる業界のお店が集いながら、その骨格となる体験があって、それらを繋ぐ通路などの共用空間が、グレーンウイスキーのように全体を包み込み、買い物のしやすさ、周りやすさをつくり出しているのかな、とか。

ブレンドが複雑になるほど、生み出される「面白さ」があるのではないか

最近、ウイスキーの新商品に、世界各地の原酒を混ぜ合わせた「ワールドブレンデッド」というジャンルが増えています。ウイスキーのおいしさの根幹が多様性であるならば、世界から原酒を集めてブレンドしたその味わいは、とても美味なのだろうと想像できます。
同じく、商業空間にも、異世界からの要素、とりわけ「モノを売る」目的ではない要素が混ぜ合わされた事例が出てきています。

例えば、駅直結の商業施設の屋上で家庭菜園を楽しめる、というものが近年増えてきています。階下のスーパーで野菜は買えるのに、あえてその屋上で自ら野菜を育てる。一見奇妙ですが、毎日通う駅に畑があれば、野菜の様子を見に行くのも気楽ですし、ちょっと畑で収穫して、足りない食材はスーパーで買って帰る、ということもできて便利そうです。自ら育ててみると、普段スーパーで売っている野菜にも愛着が湧いて来る気もして、とても素敵な「ブレンド」の例だと思いました。

私の携わらせていただいた事例としては、「商業空間内部で展開する企業ミュージアム」があります。企業ミュージアムはPRの場でもあり、そこで直接的な利益は追求しないのが一般的です。しかし、それが商業空間と合わさったのなら、PRと物販のシナジーも期待できますし、なにより、新たな面白い場になることを学ばせていただきました。

ウイスキーは飲み方でも味がガラッと変わります。ハイボールやストレート、ロックなど、飲み方にも多様性があるのがウイスキーの面白くて大好きなところです。

左から、ロック・水割り・ストレート・ハイボール

商業空間への異世界ブレンドも、多様な体験で、その都度違う面白さを味わえるような空間をつくり出したいですね。新たな味を見つける研究に終わりはなさそうです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

*ウイスキー原酒のように、多様な空間づくりを行う弊社の実績はこちら

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飯塚 篤郎

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