気になる空間 vol.2|DESIGNART TOKYO 2019 レポート(前編)

横田 智子
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横田 智子

「気になる空間」では、
最新の気になる建築や展覧会・イベントなどの空間レポートをもとに
「空間デザインの今」を独自の視点で切り取ります。
第2弾は、今年で3年目を迎えた「DESIGNART TOKYO 2019」をレポートします。

これまでの青山を中心としたエリアから新宿・銀座エリアへと範囲が広がった計104会場での開催となり、イスラエル、香港、パキスタン、タイなど17ヵ国以上のアーティストが参加する国際的なイベントに発展。
これからの空間づくりのヒントになるような作品をご紹介します。
(後編はこちら

DESIGNART TOKYOとは?

「東京」を拠点にジャンルの垣根を超えて、デザインとアートを横断するモノやコトの素晴らしさを発信・共有してゆく活動、世界の人々が創造的に感化しあうプラットフォームの提供などを目的に2017年に始まりました。

発起人の5組6名と小池都知事、Googleのバイス・プレジデントのアイビー・ロスさん、イスラエル駐日大使のヤッファ・ベンアリさん、Design Pierキュレーターのゾフィア・イロスヴァイさん。

3年目迎えた今年は「1% for Art」という公共建設の建築費の1%をパブリックアートの制作費用に充てる、欧米諸国や韓国、台湾などで法制化されている文化制度を日本でも実現するための多様なプロジェクトを実施しています。この制度によって、人々が日常的にアートを鑑賞し、感動できる社会が実現するとともに、アーティストやデザイナーの雇用が創出されクリエイティブ産業を活性化することを目指しています。

さらに昨年よりパートナーカントリーを設定しています。今年はデザインに加え、医療・テクノロジー・スタートアップの面でも先端を行く国、イスラエル。表参道のスパイラルでも展示を行いました。

今年はアーツカウンシル東京と東京都が行う「Tokyo Tokyo FESTIVAL」の助成プログラムとして、10月18日の開会式では小池都知事も登壇しました。

SHOP × NATURE|自然のダイナミズムがつくる空間の佇まい

イベントのために新しくつくった空間ではなく、もともとある店舗空間の中に、自然の生命力を感じる作品を配することで、空間を一変させた事例をふたつご紹介します。

盆栽が放つ生命力

ひとつ目はkolor南青山での盆栽師・平尾成志さんの作品展示です。平尾さんのアトリエが台風19号によって被災してしまったそうで、会期直前に何とか展示できる作品を厳選して持ち込まれたそうです。

屋外に置かれた作品は、平尾さんご自身が体験した理不尽な状況を通じて表現された「頭でっかち」な作品。そして屋内には生きた枝と死んだ枝を混在させた生死を表現した作品です。これらのふたつが空間の中心に置かれただけで、盆栽のもつ生命力が空間全体を力強く包み、凛とした空気にさせてくれます。

ブランドロゴのオブジェを装飾する遊び心も。

奥行きを感じさせる大木

ふたつ目は「サルヴァトーレ フェラガモ」銀座店における建築家・美術家の佐野文彦さんの展示です。もともとクラフトマンシップやサスティナブルを大きなテーマとして掲げているフェラガモと、京都の伝統的な数寄屋大工の工務店に弟子入りした後に建築家として独立し、職人として培った木の素材を見極め、伝統的な工法を用いた作風をもった佐野さんの想いが合致し、今回のコラボレーションが実現しました。

ウィンドウと商品のディスプレイに、ダイナミックな大木の作品が置かれ、その迫力は訪問者を圧倒させるものでした。大自然の中で長年生き抜いてきた大木の生命力が、空間に奥行きをもたせるような広がりを感じさせます。大木には樹脂加工が施され、伝統工芸と現代の感覚が融合した作品でした。

Public Space × Garden|小さな庭が、プライベート空間をつくる

東京ミッドタウン(六本木)でTokyo Midtown DESIGN TOUCH 2019 の会期中に展示された「intree table」は、都市の中に現れた“ちょっとこもれる”空間。今年のミラノサローネでブランコと一体となったテーブル&椅子を発表して注目を浴びた、岐阜を拠点に活動する「team balanco」の作品でした。

FRP製のポットに広がる小さな庭の上には、ハイチェアとそこへ向かうための飛石のような金属のステップ、みんなでシェアする細長いテーブルがあります。

ひとたびステップから登って椅子に座ってみると、囲われた感じがすごい!テーブルの凹みにすっぽり入ると、周りが木で覆われているので外の気配を気にせず、テーブルに座っている人同士が近すぎる感覚もなく…なんとも居心地のよい居場所となりました。

設計者の方にお話を伺うと、テーブルの高さは、ちょうどテーブルの天板が見えないくらいに設定されたそうです。天板が見えない→空間の中が見えるという認識にならない→外部と距離ができる、という感覚値を大事にされたそうです。空間の領域を考える上でのヒントになりますね。

納入実績は個人邸のみとのことでしたが、こういった小さなプライベード空間が、公共施設やオフィスにも展開できるのではないかと思います。
後編につづく)

DESIGNART TOKYO 概要
*会期終了しています。来年度については改めて公開される情報をご確認ください。
http://designart.jp/designarttokyo2019/
会期:2019年10月18日(金) 〜10月27日(日)
会場:表参道・外苑前 / 原宿・明治神宮前 / 渋谷・恵比寿 / 代官山・中目黒 / 六本木 / 新宿 / 銀座
主催:DESIGNART 実行委員会
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
後援:イスラエル大使館、港区

 

*ご注意ください*
本記事で掲載している展示会およびリンク先のウェブサイトの情報は、当ページ作成時点のものです。
変更されることがありますので、ご了承ください。

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横田 智子

横田 智子

ノムログ編集長
つなぐプランナー|領域をまたぐプランニング

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