地域の“もしも”を考え、点在する”魅力”を整理する

渡辺 あや
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渡辺 あや

こんにちは、NOMLABの渡辺あやです。国内各地へ足を運び、地方の魅力に触れ・関わることがライフワークです。学生の時からまちの人と一緒にイベントをつくったり、日々の業務や生活の中でも様々な地域と関わったりすることを繰り返すうちに、地域の文化や人、自然などにどんどん魅了されるようになっていきました。
この記事では、そんな筆者が取り組む社外での活動を通して、地域について考えたことや日々の「企画」業務に対する気づきを記事にまとめることにしました。

茨城の「もしも」を考え、地域の未来を描くプロジェクトへの参加

さて、筆者は2021年10月から、茨城県主催の地方創生プロジェクト「if design project」(株式会社リビタが企画・運営)に参加しています。
地域が抱える課題を解決するために、チームでその地域の特性や住む人をリサーチし、企画を立ててアウトプットすることで、参加者に茨城への興味関心を持ってもらうというもの。
普段、マーケティングやITなど別の仕事をそれぞれやっていて、多様なバックグラウンドを持つメンバーがチームになり、4か月で1つのアウトプットを行います。普段社内で一緒に仕事をするデザイナーやプランナーとは違う目線での問題のとらえ方に触れることができる、とても新鮮な機会です。
チームは6人のプロジェクトメンバーと担当エリアで普段生活しチームと一緒に課題解決へ向け動く地域コーディネーター、プロジェクトやチーム全体のサポートを行うディレクターの約8名で構成されています。

提供画像:株式会社リビタ

チームでまちの人へオンラインヒアリングを行い、情報を集める様子。

今回、社外活動の一環として一個人で参加したこのプロジェクトの活動拠点は茨城県桜川市。
「西の吉野、東の桜川」と古くから詠われるほどの山桜の名所である桜川市で、地元企業である株式会社クラセル桜川様協力の元、「山桜」をひとつのテーマに、市内外の人々に愛されるまちとなるためのコンテンツ開発や対外的な伝え方のデザインを考える、ということが初期テーマとして与えられました。

調べれば調べるほど、魅力的なコンテンツだらけ。

私たちは、市内に点在する魅力的なスポットを、体験も含めた「コンテンツ」と呼称しながら整理を進めていきました。
茨城県桜川市は、焼き物で有名な笠間市や益子町、筑波山のあるつくば市などに囲まれ、山も川もあり、春には満開の山桜が咲く美しいまちです。それだけではなく、株式会社クラセル桜川様にご協力いただき、まちを案内いただくと、桜川じゅうの農作物や伝統工芸品など魅力が集まっているファーマーズマーケット「加波山市場」や重要伝統的建造物群保存地区に指定されている「真壁の町並み」、安産祈願で有名な「雨引観音」、霞ケ浦に通ずるサイクリングロード「つくば霞ヶ浦りんりんロード」、そして市内の立派な山桜など、行きたくなる場所や体験したいアクティビティがこんなにもたくさんあることに気がつきました。

特に高峯の山桜が山を覆いつくしている様子は写真で見ても圧巻です。山桜はソメイヨシノとは違い、1つ1つDNAが違うため2つと同じ桜がなく、色も、形も少しずつ違う面白い桜だそうです。さらに開花時期も異なるため、山桜は3月末から5月上旬まで長い間その咲き誇る姿を楽しむことができ、一瞬で咲いて散っていく一般的な桜のイメージとは全く異なります。歴史も長く、紀貫之が後撰和歌集で山桜について和歌を詠んでいるほどの桜です。ご存じでしたか?

高峯の桜

市内コンテンツ(左上から加波山市場つくば霞ケ浦りんりんロード雨引観音真壁の町並み)
他にも酒寄のみかん園や市内のお寺で見られる紅葉などコンテンツであふれています。

市内地図(◎参考文献:茨城県桜川市さくらめぐりMAP)

点在するコンテンツをつなぎ、魅力をより多くの人へ届けるための提案へ。

活動を重ねていく中で、「桜川は春に来てもらうだけで良いのか」「自転車をだれかと一緒にしゃべりながらこぐって、すごく会話が弾む」といった、メンバーの気づきが初期テーマ以上に目立つようになりました。
しかし、市内地図を見てみると、こんな素敵な場所がどれも車で行かないとたどり着けないほど離れて点在していることがわかります。桜の名所ではありますが、四季を通じてのどかで自然豊かな景色を楽しめることから、春に桜を見るだけではとてももったいないまちです。

チームで議論やフィールドワークを重ね、桜川市へは、「桜を軸とした新しい資源の発掘」と「桜川市民の誇りの醸成」を再度テーマとして掲げ、通年のまちの魅力を発信するコミュニティ「まちごと桜川学園」を提案しました。

最終プレゼンの様子。桜川市長と株式会社クラセル桜川様へ向けて。

この提案は、市内南北をつなぐ「りんりんロード」と「学園」という世界観をもって、点在するまちのコンテンツと季節性のある桜を“学園を連想させるシンボル”として位置づけ、イベントとして発信することで、主に自転車でまちを回遊してもらう仕組みです。

参加者(学園生)が市内(学園)を回遊(移動教室)することで、市内の人(先生・教室)との接点が増え、「桜川市のことを想う人」の数が増えていく(=桜川をとりまくコミュニティが大きくなっていく、母校のように桜川に愛着を持つ人が増える)ことを目指しています。

参加者は桜川を移動教室しながら巡り、地域の人はそこでの商売を通して参加者にまちや事業について知ってもらう。運営側は円滑にコミュニティ形成が行われるよう、地域の人と参加者をイベントでつないだり、新しく地域で行われる授業を開発したりします。

授業開発の例。市内に点在するコンテンツは教室に、そこで行われるイベントは楽しい授業から学校行事まで幅広い。
「学校生活」という捉え方で何気ない活動も楽しく、知らないうちに桜川をめいっぱい楽しむことができる。

そうして3者がつながり、大きな学園のようなコミュニティになることが目標です。
いつか、「この間来た学生さんは次の秋に芋掘りに来てくれるらしい」なんて、地域のどこかから聞こえてくると良いなと思いながら、実現へ向けた準備を進めています。

“魅力”を再整理する

議論を重ねアイデアを形作っていく中で、私がしていることはチームメンバーの視点や気づきの中から地域からお預かりしている魅力と掛け合わせられるところを探し、生まれたアイデアを外から見て理解しやすいように整理しているということなんだなぁ、と改めて気づきました。

「企画」は「編集」「情報整理」と呼ばれることもありますが、その言葉通りだと思います。私も日々の業務の中で、隠れた魅力に気付き、よりよい企画を編み出せるよう、日々研鑽したいと思います。

最後に

初期テーマを投げかけていただき、地域コーディネーターとして大変お世話になった株式会社クラセル桜川の近納裕政さんとお話ししました。

近納さん自身が「桜川ののどかな風景がうまく言葉にならないけど好き、だからそれを守るために山や、桜や、農業を守る。働く人たちを守る。」ということを目指して活動されているというお話を受け、地域課題を解決するということは企画を構想すること以上に、まちを想う人の気持ち・魅力への愛情が欠かせないと感じた一瞬でした。

ちなみに、プロジェクト期間は秋から冬にかけてだったこともあり、実は初期テーマである山桜すら、私たちはまだ見ることができていません。
今から、春が来るのがとっても待ち遠しいのと同時に、考えた企画への感じ方やアイデアが本物の桜を見ることによってどう変化していくのか、とても楽しみです。

10月、市内の山桜が良く見えるスポットから。
まだらに見えている木々が春には満開の桜になります。

春になったら、ぜひ満開の山桜を見に桜川市へ来てください。いつもとは一味違う、お花見を楽しむことができます。その際は、周辺で楽しめる市内のコンテンツもお忘れなく。
満開の桜を横目に、風をきってりんりんロードを走る体験はここでしかできない、とっておきの思い出になります。

<関連リンク>
桜川市
クラセル桜川 
if design project

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渡辺 あや

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ストーリープランナー
止まらない好奇心

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